アジリティーを世界に広めた男
2017.01.31
アジリティー発祥の国と言えば 「英国 」
この事は、多くの愛犬家の方もご存知と思います。
でも、 英国の著名な訓練士であった「 ロイ・ハンター 」が、アジリティーを世界に広めたということは余り知られていません。
私がロイ・ハンターの家を初めて訪問した時、庭には広い芝生があり、その上に木組みのアジリティーが置かれていました。
それらは普通に使用できる様なアジリティーではなく、とても可愛らしいものでした。
何故こんな使えない様な、可愛いアジリティーを置いているのかな?
彼と話すうちに庭に置かれたその可愛らしいアジリティーに、彼の強い思いがこめられている事を知りました。
ロイ・ハンターと言ってもご存知の方は少ないと思いますので、彼のプロフィールについて、そして先程述べた彼の強い思いについてお話ししましょう。
彼は私の最も尊敬する訓練士の一人で、知識、技術はもとより人間性も素晴らしい人でした。
彼はこの時すでに車椅子生活で、しかも体調も良くない状態でしたから、訓練士としての仕事はもうしていませんでした。
でも、彼に会えた事、しかもお宅にまで訪問出来た事は私の一生の思い出となりました。
彼は16歳で英国陸軍に入隊、そこで軍用犬、テロリスト犬の育成に務め、40歳を過ぎてからは、英国及び米国陸軍への軍用犬の扱い方の指導にあたりました。
退役後はペットドッグの普及に努め、AADT(アングロアメリカ ドッグトレーナーズ協会)を設立、英国だけでなく米国をも含めてドッグトレーナーの育成、指導にあたりました。
日本でペットドッグの普及に努めたイアン・ダンバー、JAHAが招致したテリー・ライアン、ジョン・アンクル、アラン・メンジーズといった著名なドッグトレーナー達も彼の協会に加入し彼の指導を受け、メンバーとして活躍しました。
私もこのメンバーの一員です。
多くの英国、米国のトレーナー達は、彼の本を読みトレーニングを学んだと言われています。
私共のスクールの提携先代表リン・バーバーも若い頃彼の本を読み学んだそうです。
この様に彼は多くの著名なドッグトレーナーに多大な影響を与えました。
これらのことからも、ロイ・ハンターの偉大さがわかっていただけるのではないでしょうか。
彼は私に古いアルバムを見せながら、陸軍時代の話をしてくれたのですが、写真のほとんどは、マリノア、ジャーマンシェパードでした。
「屈強な犬達を扱う軍用犬育成に人生を捧げていた貴方が、何故アジリティーを世界に広めようと思ったのですか?」疑問を感じた私は彼に質問しました。
彼の答えはこうでした。
「 私は仕事とは言え、数多くの犬達を国家の為に、死に至らしめてしまった。
こんな私でも、犬達に好かれて人生を終えたいんだよ。
だからこそ人と犬とが楽しめるトレーニングを広めようと思ったのさ。」
それを聞き、私は彼の庭の可愛いアジリティーの意味が分かりました。
“犬と楽しむ” という彼の強い思いの表れだったのだと。
彼の歩んだ犬達との険しい道があったからこそ、英国発祥のアジリティーは、世界に広まる事となったのでしょう。
現在日本でもアジリティーの人気は高く、世界大会で2位を取った方もいます。
JKCの競技会の中でも、アジリティーの参加人数は群を抜いている様です。
今後もこのアジリティー人気は続くことでしょう。
次回は、日本ではお目にかかった事のない、英国で私が実際に体験したアジリティーについてお話しします。
ぜひご覧ください。