英国 、日本では体験できない驚きのアジリティーの数々
2017.02.07
前回は世界にアジリティーを広めたロイ・ハンター について話しました。
日本では、アジリティーを好きな方でも殆ど知る人のないロイ・ハンターですが、彼抜きにはアジリティーの話は出来ない程、欧米では有名なドッグトレーナーなのです。
彼については前回のブログNo.8でお話ししたので、お読み頂いた方もいらっしゃると思います。
では早速、私が英国で実際に体験したアジリティーの話を始めましょう。
アジリティーはもともと馬で行うスポーツが起源です。
人が馬にまたがり、人馬一体となり共に様々な障害を乗り越え、ゴールを目指して頑張る。
これを英国で、犬と共に楽しむスポーツとして工夫され、現在行われている様々な形に進化させて行ったのです。
私が英国で体験したアジリティーの一つは、最も原型に近いものでした。
大きな美しい森の中の開けた所に倒れた大木や藪を利用してコースを設定するという、まさしくナチュラルという言葉がぴったりの素晴らしいものでした。
これが私の「 英国、アジリティーデビュー 」でした。
犬と一緒に森の中を散歩するのだって楽しく気持ちの良いものなのに、森の中で自然を利用しアジリティーが出来るなんて、どんなものだろうと参加の話を聞いた時にはワクワクしたものです。
そして実際に出場してみると、競技の勝ち負けより、素晴らしい環境の中でアジリティーを行える事に感動しました。
次に参加したのは、これがまたなんと乗馬チームと犬チームが一つのペアを組み
アジリティーを行うというものだったのです。
まず犬チームが決められた障害物を乗り越え、完走したら今度は乗馬チームが行うのです。
私は知り合いのドッグトレナーから借りたボーダーコリーとの参加でした。
ペアを組む乗馬チームの騎手は中学生くらいの少女でした。
始まる前、挨拶に行った時の彼女のちょっと見下した様な、ガッカリした様な眼差しは、忘れられません。
私のペアは、この東洋人のおじさんなの!
アジリティーなんて出来るのかしら?
こんな声がきこえてくる様な眼差しでした。
参加者の中で、東洋人は私一人。
失敗したら申し訳ないと思いながらの出場となりましたが、犬の優秀さに助けられ、順調なタイムで乗馬チームにバトンタッチ出来ました。
さらに私のペアの乗馬チームも頑張り、なんと2位の結果で終わることが出来たのです。
勿論、彼女も彼女の両親も大喜びでした。
3つ目のアジリティーは犬と共に大型のSUV車で駆け抜けるというものでした。
こんな大掛かりなアジリティーを犬と一緒に楽しむ、凄いなぁの一言でした。
先ず、一斉にSUV車がスタートし、ある地点で待機していた犬の元に乗りつけます。そして急いで犬を助手席に乗せ、さらに車は鉄板で出来たシーソーを通り、沼地やデコボコ道を走り、大木のスラロームを走り抜け、ゴールへと向かいます。
車の走行ラインそして到着タイムを競います。
犬はシートベルトをしていないので、犬の服従能力や怖がらない勇敢さ等も試される競技なのです。
この会場には秋田犬や柴犬も多く、日本では見かけない犬も参加している事に感動を覚えました。
勿論、競技自体もダイナミックで車好きも犬好きも楽しめるユニークなものでした。
最近もクラフト展でアジリティーやフライボールのイベントを数多くやっていましたが、英国には日本では考えつかない、思っても見ない様なアジリティーが存在するのです。
アジリティーという分野を見ただけでも、とても興味深いと思うと同時に、英国の犬との歴史の長さや違いを感じさせられるのです。
このように私が英国で見聞きしたり体験したことで、私がいつも感じてしまうのは、日本はまだまだ犬との歴史が浅いなあということです。
今回も私のブログを読んで下さり有難う御座います。
もし読者の皆様が、「 犬に関する事で、こんなのブログで話して欲しい!」という話題がありましたら、可能な限りお話しさせていただきます。
アジリティーを世界に広めた男
2017.01.31
アジリティー発祥の国と言えば 「英国 」
この事は、多くの愛犬家の方もご存知と思います。
でも、 英国の著名な訓練士であった「 ロイ・ハンター 」が、アジリティーを世界に広めたということは余り知られていません。
私がロイ・ハンターの家を初めて訪問した時、庭には広い芝生があり、その上に木組みのアジリティーが置かれていました。
それらは普通に使用できる様なアジリティーではなく、とても可愛らしいものでした。
何故こんな使えない様な、可愛いアジリティーを置いているのかな?
彼と話すうちに庭に置かれたその可愛らしいアジリティーに、彼の強い思いがこめられている事を知りました。
ロイ・ハンターと言ってもご存知の方は少ないと思いますので、彼のプロフィールについて、そして先程述べた彼の強い思いについてお話ししましょう。
彼は私の最も尊敬する訓練士の一人で、知識、技術はもとより人間性も素晴らしい人でした。
彼はこの時すでに車椅子生活で、しかも体調も良くない状態でしたから、訓練士としての仕事はもうしていませんでした。
でも、彼に会えた事、しかもお宅にまで訪問出来た事は私の一生の思い出となりました。
彼は16歳で英国陸軍に入隊、そこで軍用犬、テロリスト犬の育成に務め、40歳を過ぎてからは、英国及び米国陸軍への軍用犬の扱い方の指導にあたりました。
退役後はペットドッグの普及に努め、AADT(アングロアメリカ ドッグトレーナーズ協会)を設立、英国だけでなく米国をも含めてドッグトレーナーの育成、指導にあたりました。
日本でペットドッグの普及に努めたイアン・ダンバー、JAHAが招致したテリー・ライアン、ジョン・アンクル、アラン・メンジーズといった著名なドッグトレーナー達も彼の協会に加入し彼の指導を受け、メンバーとして活躍しました。
私もこのメンバーの一員です。
多くの英国、米国のトレーナー達は、彼の本を読みトレーニングを学んだと言われています。
私共のスクールの提携先代表リン・バーバーも若い頃彼の本を読み学んだそうです。
この様に彼は多くの著名なドッグトレーナーに多大な影響を与えました。
これらのことからも、ロイ・ハンターの偉大さがわかっていただけるのではないでしょうか。
彼は私に古いアルバムを見せながら、陸軍時代の話をしてくれたのですが、写真のほとんどは、マリノア、ジャーマンシェパードでした。
「屈強な犬達を扱う軍用犬育成に人生を捧げていた貴方が、何故アジリティーを世界に広めようと思ったのですか?」疑問を感じた私は彼に質問しました。
彼の答えはこうでした。
「 私は仕事とは言え、数多くの犬達を国家の為に、死に至らしめてしまった。
こんな私でも、犬達に好かれて人生を終えたいんだよ。
だからこそ人と犬とが楽しめるトレーニングを広めようと思ったのさ。」
それを聞き、私は彼の庭の可愛いアジリティーの意味が分かりました。
“犬と楽しむ” という彼の強い思いの表れだったのだと。
彼の歩んだ犬達との険しい道があったからこそ、英国発祥のアジリティーは、世界に広まる事となったのでしょう。
現在日本でもアジリティーの人気は高く、世界大会で2位を取った方もいます。
JKCの競技会の中でも、アジリティーの参加人数は群を抜いている様です。
今後もこのアジリティー人気は続くことでしょう。
次回は、日本ではお目にかかった事のない、英国で私が実際に体験したアジリティーについてお話しします。
ぜひご覧ください。
あなたの知らないシェパードの可能性 vol 2
2017.01.24
今回はシェパード犬の話の続きです。
アジリティー、フライボール、ディスク等の障害競技、ドッグショー等の品評会、訓練試験等の服従競技と日本でも犬と共にスポーツをする楽しさが知られる様になり、愛好者も増え競技会も多数開催されるようになりました。
欧米においては、真っ先に挙げられるドッグスポーツと言えば、「 IPO 」と 「ジーガー展」です。
IPOとはドイツ語で、インテルナッツィオナーレ プリューフング ゾルトドヌングの略で、FCI ( 国際畜犬連盟)とWUSV (世界シェパード犬協会)の基準に基づき行われる国際訓練試験の事です。世界でも最高峰のドッグスポーツといわれています。
シェパード犬だけの大会と全犬種対象の大会と二つの世界大会があります。
この競技は追求、服従、防衛の三つから構成され、それぞれの合計で点数を競います。
シェパードにとっては、これぞ本領発揮と言える、彼等の素晴らしい特性を余すところなく生かした、総合競技と言えます。
BH (同伴犬訓練試験) とIPO Ⅰ ・IPO Ⅱ ・IPO Ⅲ の4つのレベルがあり、この中で世界大会が行われるのは 、もっともレベルの高い IPO Ⅲ で、年に一度 WUSVとFCI主催の二つがあり、それぞれ参加各国の持ち回りで開催されます。
開催される場所も有名なサッカー場などで、皇室の方がご覧になることもある、伝統と格式ある大会です。
私が以前ベルギーで行われたFCIの大会を観た時、最終日ベルギー皇太子ご一家が観覧され、表彰式のイベントでスピーチされました。
少し前のことではありますが、この時、犬の競技会への日本と欧米との認識の違いを強く感じました
IPOの練習風景をご覧になった方によく聞かれる事があります。
犬に強制しているんじゃないの?
鞭で叩いて虐待しているんじゃないの?
はっきり申し上げます。これは誤解です。
まず、防衛で使う鞭は、大変に柔らかいもので、馬に使う鞭とは別物です。
しかも、使用して良いのは最も硬い犬の肩の部分のみです。
飼い主も犬も世界大会に出場するには、他のスポーツ同様多くの練習が必要です。
ですから、犬に強制していたのでは、練習も長くは続けられないでしょうし、生き生きと競技するする犬の姿も見られないでしょう。
IPOの世界大会を見ていると、どのペアの選手と犬からも、まるで人と犬が肩を組んで競技をしているかの様な印象を受けます。
強い結びつきが感じられるのです。
そこまで人と犬がお互い信頼し合って心が通じ合わなければ、大変な練習をこなして、世界大会への参加を勝ち取るのは難しいだろう、そんなことを感じてしまう程
なのです。
英国では長いことこのIPOを否定し、参加をしていませんでした。
しかし近年、犬に対する強制や虐待等になるのではとの誤解や偏見も解け、積極的に参加する様になりました。
シェパードは前回のブログで、「犬の王者」と言われていると書きましたが、世界大会においても、シェパードだけの単犬種のみの IPO がある様に、その歴史の長さや、総合的に優れた能力を有するからなのです。
嗅覚による追求訓練、勇敢さや闘争心の必要な防衛訓練、また忍耐力や服従心を試される服従訓練まで全ての訓練でその身体及びメンタル面で優れているシェパードは、「この犬種で訓練を学べば、全ての犬種が扱える様になる」といわれる程の犬種なのです。
こんな可能性を持ったシェパードはペットとしても、多くの愛犬家が憧れるところではありますが、日本の住宅事情を含め、飼うとなると中々手が出せないのが現状でしょう。
しかし、私の知り合いでごく普通の家庭でシェパードをペットとして飼った多くの方が、そのすばらしさを讃えています。
シェパードはその飼い方そしてトレーニングの仕方で最高のパートナーとなるはずです。
勿論、シェパードだけでなくこれはどんな犬にも言えることですが、その魅力を知り抜き、シェパード犬愛好家の私としては、ついシェパード贔屓になってしまいます。
愛犬家の皆様も、シェパードを遠い存在としてでなく、理解を深め、身近かに感じて頂けると嬉しいです。