あなたの知らないシェパードの可能性 vol 2
2017.01.24
今回はシェパード犬の話の続きです。
アジリティー、フライボール、ディスク等の障害競技、ドッグショー等の品評会、訓練試験等の服従競技と日本でも犬と共にスポーツをする楽しさが知られる様になり、愛好者も増え競技会も多数開催されるようになりました。
欧米においては、真っ先に挙げられるドッグスポーツと言えば、「 IPO 」と 「ジーガー展」です。
IPOとはドイツ語で、インテルナッツィオナーレ プリューフング ゾルトドヌングの略で、FCI ( 国際畜犬連盟)とWUSV (世界シェパード犬協会)の基準に基づき行われる国際訓練試験の事です。世界でも最高峰のドッグスポーツといわれています。
シェパード犬だけの大会と全犬種対象の大会と二つの世界大会があります。
この競技は追求、服従、防衛の三つから構成され、それぞれの合計で点数を競います。
シェパードにとっては、これぞ本領発揮と言える、彼等の素晴らしい特性を余すところなく生かした、総合競技と言えます。
BH (同伴犬訓練試験) とIPO Ⅰ ・IPO Ⅱ ・IPO Ⅲ の4つのレベルがあり、この中で世界大会が行われるのは 、もっともレベルの高い IPO Ⅲ で、年に一度 WUSVとFCI主催の二つがあり、それぞれ参加各国の持ち回りで開催されます。
開催される場所も有名なサッカー場などで、皇室の方がご覧になることもある、伝統と格式ある大会です。
私が以前ベルギーで行われたFCIの大会を観た時、最終日ベルギー皇太子ご一家が観覧され、表彰式のイベントでスピーチされました。
少し前のことではありますが、この時、犬の競技会への日本と欧米との認識の違いを強く感じました
IPOの練習風景をご覧になった方によく聞かれる事があります。
犬に強制しているんじゃないの?
鞭で叩いて虐待しているんじゃないの?
はっきり申し上げます。これは誤解です。
まず、防衛で使う鞭は、大変に柔らかいもので、馬に使う鞭とは別物です。
しかも、使用して良いのは最も硬い犬の肩の部分のみです。
飼い主も犬も世界大会に出場するには、他のスポーツ同様多くの練習が必要です。
ですから、犬に強制していたのでは、練習も長くは続けられないでしょうし、生き生きと競技するする犬の姿も見られないでしょう。
IPOの世界大会を見ていると、どのペアの選手と犬からも、まるで人と犬が肩を組んで競技をしているかの様な印象を受けます。
強い結びつきが感じられるのです。
そこまで人と犬がお互い信頼し合って心が通じ合わなければ、大変な練習をこなして、世界大会への参加を勝ち取るのは難しいだろう、そんなことを感じてしまう程
なのです。
英国では長いことこのIPOを否定し、参加をしていませんでした。
しかし近年、犬に対する強制や虐待等になるのではとの誤解や偏見も解け、積極的に参加する様になりました。
シェパードは前回のブログで、「犬の王者」と言われていると書きましたが、世界大会においても、シェパードだけの単犬種のみの IPO がある様に、その歴史の長さや、総合的に優れた能力を有するからなのです。
嗅覚による追求訓練、勇敢さや闘争心の必要な防衛訓練、また忍耐力や服従心を試される服従訓練まで全ての訓練でその身体及びメンタル面で優れているシェパードは、「この犬種で訓練を学べば、全ての犬種が扱える様になる」といわれる程の犬種なのです。
こんな可能性を持ったシェパードはペットとしても、多くの愛犬家が憧れるところではありますが、日本の住宅事情を含め、飼うとなると中々手が出せないのが現状でしょう。
しかし、私の知り合いでごく普通の家庭でシェパードをペットとして飼った多くの方が、そのすばらしさを讃えています。
シェパードはその飼い方そしてトレーニングの仕方で最高のパートナーとなるはずです。
勿論、シェパードだけでなくこれはどんな犬にも言えることですが、その魅力を知り抜き、シェパード犬愛好家の私としては、ついシェパード贔屓になってしまいます。
愛犬家の皆様も、シェパードを遠い存在としてでなく、理解を深め、身近かに感じて頂けると嬉しいです。
あなたの知らないシェパードの可能性
2017.01.17
シェパードについてあなたはどの位知っていますか?
警察犬、救助犬、警備犬等の使役犬でしょう!
シェパード = 訓練士 、荒っぽい犬 でペット犬じゃないよね!
こんな答えが返ってくるのではないでしょうか?
そこで今回はそんなイメージを持たれ、日本のペット犬ランキング35位とちょっと不名誉な数字を頂きながらも、けなげに頑張っているシェパード犬について皆様のイメージを変えようとお話しします。
実はシェパードは、全世界ではペットとして、最も人気のある犬種の一つなのです。
そして最も人間に貢献している犬なのです。
まずはシェパードが原産国のドイツ以外の世界にも知られるきっかけとなった歴史から話しましょう。
現在60代以降の方ならご存知の方も多いと思いますが、1950年代後半に日本でも放送されていた「名犬リンティンティン」というアメリカの人気テレビドラマがありました。
これは当時放映されていた「名犬ラッシー」と同様に、少年と犬の絆を描いたドラマでした。
どちらも、当時の日本では大ヒットでした。
こうして日本でもシェパードは、知られるようになったのです。
実際の「リンティンティン」は第一次世界大戦後のフランス・ロレーヌ地方で生まれ、1919年一人のアメリカ人により彼の帰国とともにアメリカに連れていかれそこで育ちました。
そして20本以上の映画に出演し、ワーナーブラザースを救ったとも言われた犬でした。
アカデミー賞のノミネートも考えられたそうですが、対象は人間のみということでそれは無かったそうです。
話は戻りますが、1925年ドイツで訓練を受けた盲導犬第一号として「ラックス」という名の犬が登場、同時期にヘレン・ケラーも、こちらはアメリカで訓練を受けた盲導犬を入手しました。
シェパードはこのように盲導犬として初めて訓練され、使用された犬でした。
その後、第二次世界大戦時、ヨーロッパの国々ではシェパードのその素晴らしい特性故に軍用犬として用いられるようになりました。
軍用犬としての役割と言っても多義に渡ったそうです。
ヒットラーがこの犬種を好んだことは知られていますが、そのことでシェパードの人気や評判は決して落ちませんでした。
シェパードはその後も欧米では高い人気を維持し続けました。
そんな中の1899年、WUSV ( ドイツ ジャーマンシェパード犬協会 )が設立されました。
これは人気の高い犬種の持つ気質、体型、健康を維持していく為で、不適切な交配や繁殖を無くし、犬の王者と言われるシェパードの犬種の持つ品格と特性を保つのが目的でした。
こうしてシェパードはその勇敢な気質、優れた運動能力を利用して、警察犬、軍用犬、捜査救助犬、麻薬探知犬等の多義にわたる場面での活躍を期待され、WUSVは繁殖及び改良の維持管理に努めていったのです。
この様に世界的にも大きな組織を持つ協会は、他の犬種ではありません。
日本でも1948年に農林水産省の管轄下において、WUSVの日本支部JSV( 日本シェパード犬登録協会)が組織されました。
1950年代後半の「名犬リンティンティン」や「名犬ラッシー」が流行っていた時代、小学生だった私は家族とともに九州に住んでいました。
父が犬好きで、シェパードを飼っていました。
私は子供心に、シェパード犬を持っていることが嬉しく、自慢でした。
私達家族の様にシェパードをペットとして飼う方もいましたが、シェパードの持つ優れた特性は日本でも警察犬として珍重されることも多く、訓練士たちは家庭犬の躾けと共に、シェパードの警察犬への指導育成も行いました。
こうして日本では、ペットと言うより、シェパード = 警察犬としてのイメージが定着して行ったのでしょう。
これが大まかなシェパード犬の歴史です。
次回はシェパードが犬として最高の能力を持つと言われる所以とペット犬としての適性についてお話しします。
英国犬のいる街角風景
2017.01.09
2017年、明けましておめでとうございます。
年明けですから少しリラックスしたブログでスタートしましょう。
という事で、今回は英国で見かけた私の心に残ったワンちゃんのエピソードをお話しいたします。
パブで飲んでいるご主人をドアの外でおとなしく待っているブル君
電車のホームにノーリードのボーダーコリー3頭、飼い主の老婦人は犬達を気にする事もなく新聞を読んでいる。
電車が来ると当たり前の様に夫人のそばに近寄り、夫人と一緒にスーと電車に乗り込んで行くボーダーコリー達
店先でウロウロしている果物屋のシェパード。向こうから視力に障害のある方が盲導犬を連れてやってくる。
どうなる事かと心配して見ていると、まるで分かっているよと言わんばかりに、盲導犬をやり過ごしたシェパード
これらのワンちゃん達のエピソードは、以前にも本等でお話したのですでにご存知の方もいらっしゃると思います。
本日はさらに3つのエピソードをお話ししましょう。
1つ目はバタシードッグホームを訪ねた帰り、犬連れの方の多くいるバタシー公園に寄った折見た光景です。
小学校高学年くらいと思える少女が二人、それぞれの犬にボールを投げては取ってこさせていました。
一人はチワワを、もう一人はグレートデンを。
二人の連れている犬達の体格の違いは歴然。
しかし二人の様子から、それぞれの犬にしっかり服従訓練がはいっている事は見て取れました。
ご存知の様にグレートデンの大きさはハンパありません。
そのグレートデンも連れている女の子の体より大きいのに彼女は充分にコントロール出来ているのです。
その様子には本当に驚かされました。
次の話題は、街なかの犬のしつけ教室で見た光景です。
そのスクールでは攻撃性のある犬を、口輪をする事により安全を保ちながら、クラスに参加させていたのです。
日本では、口輪をした犬を連れている飼い主さんを外でほぼ見かけることはありません。
多分飼い主さんも、口輪姿の犬を見られるのを嫌がっているからなのでしょうか。
この辺は英国人と日本人の大きな違いでしょう。
英国人トレーナーは、この様な攻撃性のある犬であっても口輪をつけスクールに参加させ、人と犬の輪に入れることにより、その攻撃性も緩和すると考えます。外にもどんどん連れ出す必要があるとも言います。
ですから、英国では口輪をつけた犬が堂々と散歩している姿を見かけます。
最後にクラフト展で見た光景をお話ししましょう。
何年か前の事ですが、私はバス停でクラフトの会場行きバスを待っていました。バス停はものすごい混みかたで、多くの人が犬連れでした。しかも小型犬よりも大型犬を連れている人の方が多いと言う有様でした。
こんな混み方なのに、犬の飼い主達はまったく何も気にもしていない様子で、笑いながらお喋りに興じていました。
暫くしてバスが来ました。
そして、乗り込みが始まると、まさに東京のラッシュアワーのそれと同じ様に、少しずつ列は前へ進んでバスへと乗り込んで行きました。
内心こんな状況下で犬達はちゃんと乗れているのか、飼い主はどう思っているのかと、ハラハラしていました。
乗ったら乗ったで、すし詰め状態です。
しかし後ろを振り向くと、私の後ろに並んでいた3頭のサルーキーを連れた女性がいました。
彼女達も乗り込めたのだなあと思いながら足元に目を移すと、ボーダーコリーがおとなしく座り、右手にはハスキーが立ったままじっとたたずんでいました。
この混んだバスの中で平気でいられる犬達に私は驚きを禁じ得ませんでした。
恐らく人間に交じって20頭以上の犬達がこのバスのなかに乗っているはずなのに、騒いだり吠えたりする犬は全くいなかったのです。
こんな光景を恐らく日本では目にすることはないでしょう。
以上、今回は英国で出会った素敵なワンちゃん達についての話しでした。
では、犬を愛する皆様にとって今年も良い年になります様に。